『ひさしのない窓』

引っ越して丸2ヶ月が過ぎた。

正直に言う、今度の引越は、あまり乗り気がしなかった。
前の家よりもずっと手狭な新居で、いまだに段ボールの多くが収まる場所もなく山積みのまま。

なにより僕にとって、別に思い入れのある土地でも、なんでも無かった。
でも妻にとってそうではないので…つまりまぁ、僕が折れた。


そんな新生活だから、静かな普通の日常であることを除くと、楽しく話せることがあまり無いんだけど。
それでも「これは良いな」と思ったことがある。

キッチンの前の出窓。


4階建の最上階、東に面する僕たちの部屋は、東側にキッチンがある。
出窓は、キッチンについているにしては少々大きくて、晴れた日には一面に青空が広がる。

それにしても、ずいぶん開放感があるなぁ、
なんでだろう、と、ずっと首をかしげていたのだけど、
2ヶ月過ぎて、ようやく気がついた。

この窓、ひさしが無いんだ。


あらためて周囲の家も含め、あらゆる窓を確かめてみた。
だいたいの家の、あらゆる窓には、だいたい雨避けのひさしがついている。
窓にひさしが無くとも、それより少し上に、大きい陽避けのひさしか屋根がついている。

あらためて首を突き出して、この窓の上のほうを確かめてみた。
たしかに、どう見ても、どちらも無い。


もちろん欠点もある。
雨が降れば吹き込んで、うっかりすると水浸し。
真夏の朝方なんか、陽射しが強すぎて、あまり立ちたくない。

それでも、やっぱり、この窓は悪くない。


先日、何の気無しにコップを洗いながら窓の外を見たら、ちょうど入道雲が広がっていた。
あまりにも立派だったので、シャッターを押してみたら、こんな写真が撮れた。
この窓の良さが少しでも伝わればいいんだけど。

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